2013年4月19日金曜日

浜松市楽器博物館その1

前回、「ディロ!」「ディロ!」と車中で叫びながら芸を磨きながら浜松まで走ったと書きましたが、着いた先は、浜松市楽器博物館でありました。


閉館時間は17時。ところが着いたのは16時。
学芸員の方に展示品の撮影とブログへの掲載をご快諾いただき、急いで回りました。

もちろん、目指すのは階下の管楽器コーナー。

広い地階の一壁面が管楽器コーナーになっています。
この写真だと右手の壁の奥から、金管→木管の順に展示されています。

最初はこれでしょ。


金管楽器のご先祖様、「ルール(Lur)」。

高校生の頃、バンドジャーナルの「金管楽器の歴史」の特集だか別冊だかにありました。その記憶だと、

青銅器時代の楽器(紀元前1000年頃)
・北欧の泥炭地から発掘される。
二本一対で発掘されることが多い。
・儀礼や祭祀で用いられたと思われるが、実際に吹奏されたかどうか分からない。

というようなことで、まあ、昔のことですからね、よく分からないことが多いのは仕方ないのですが、それにしてもよくできてるし、よく残ってるなあと感心します。マウスピースも付いているし、吹けば音が出るような感じ。3000年も前のものとは思えません。




ところが、解説板をよく見てみると……


19世紀から20世紀!?

レプリカ(複製品)だったんですね。3000年も前のものではなかった。
まあ、そりゃそうでしょう。本物は泥炭地から発掘されているんですよ。いくら酸素が遮断されていたとは言え、よく見りゃマウスピースの根元に飾りがぶら下がっているじゃありませんか。そこまで保存状態がいいワケありませんよね。

それにしても不思議なかたちです。ベルのように見える部分はベルではなく、管の出口に円盤で装飾を施しているだけなのです。なんか蓮に見えますが、蓮はインド原産の植物なので紀元前に北欧の人々が知っているはずもなく、何なんでしょう、このかたち。謎の多い楽器です。

音は聞いたことありませんが、形状と素材から想像するに、相当荒々しい音がすると思います。

……と思いきや、実物はこんな音でした。結構普通ですね。これは、現代のトランペット奏者かホルン奏者が演奏しているのでこんな現代風な音がするのでは?と思ってしまうほど普通です。もっと荒々しいものを期待していた者としては、ちょっと驚き。そう、「天空の城ラピュタ」でパズーの代吹きが「必殺仕事人」の数原晋だったことを知ったときくらいの驚きがあります。

信号音だけかと思いきや、交響曲第4番「不滅」で有名なデンマークの作曲家・ニールセン"Lur Signals"というルール二重奏を書いていました。これは珍品中の珍品。ところが、三省堂の「音楽作品名辞典」にも、ウィキペディアにも、そしてお膝元のデンマーク・カール・ニールセン協会の作品リストにも載っていないのです。うーん、なぜだろう。

聴いてみると、「あれ?ホルンじゃないの?」と思いますが、アップした方が"The LUR is not a French Horn."とわざわざ書いているので、これは本物のルールを使っているようです。最初の音源と調が違うようですので、F管とかEs管とかあるのでしょうか?

しかし、これで上の展示品がレプリカである理由が分かるような気がします。実はルールは北欧では案外普通の楽器で、その音楽は日本における雅楽のような位置にあり、ルールの愛好者がいたりして、(超)古典音楽として演奏され続けているのではないでしょうか。だから、ニールセンが二重奏を書くことができたのだし、19~20世紀に楽器を作る理由があったのでしょう。



さて、最初は長文で攻めに攻めたこのブログ。快調に飛ばしていたツケが回り、最近乱視がひどくなって参りました。なので今回はここまで。「浜松市楽器博物館」はこの先まだまだ続きます

2013年4月7日日曜日

うー、まんぼ。


ラテンを演奏していると、時々「Mambo!」とか「Whoo!」とか譜面に書いてあって、どうしていいんだか。

ニューサウンズの「ウエスト・サイド・ストーリー・メドレー」でこのテのかけ声に初めて出会ったという方は多いのでは?
高校生は多感なお年頃。いかに譜面の指示であってもバカでかい声を出すのは死ぬほど恥ずかしいものです。結果、中途半端なかけ声になってしまい、「まんぼ。」などと残念な感じに終わってしまいます。「う。」に至っては「具合悪いの?」と指揮者に心配される始末。

当番が入った高校の吹奏楽部はちょっと毛色が変わっていて、演奏するポップスのかなりの部分をダンスミュージックが占めていました。タンゴ、ルンバ、パソドブレ、ビギン、サンバ、チャチャそしてマンボ。昭和末期とはいえ当時の高校としてはかなり珍しいのではないでしょうか?

当時の高校吹奏楽界はアルフレッド・リードが全盛で、大編成の学校は、こぞって演っていたものでした。
ウチもやりましたよ、アルフレッド。「ハウゼ」の方ですけどね。ある日、まじめな顔でホルンの女の子に「猟犬やりたいなあ」と言ったら、「あんたねえ、やりたい曲とできる曲は違うのよ!」と一喝され、この言葉はいまだに当番の中で名言として生きています。いや、向上心がないといえばそれまでですが、やはりそのバンドの身の丈にあった選曲は大事だと思います。

脱線しました。が、元々このブログには本線がないことをご了承ください。

で、死ぬほど恥ずかしいラテンのかけ声を1ステージで何度もやらされるのですが、あれはどうやってかければいいんでしょうか。

あのかけ声は「マンボ王」ペレス・プラード(1916ー89 キューバ→メキシコ)が広めたもので、レコーディング中、あまりのノリの良さに思わず叫んだと本人が言っています。ペレス・プラードといって分からない方は、「マンボNo.5」をご覧になれば、お分かりになるでしょう。ここで真ん中でかけ声をかけながら踊っているおじさんがペレス・プラード大先生です。絶好調ですね。そう言や歌わされたわ「シ、シ、シ、ヨケーロマンボ、マンボ」ってね。芸のためとは言え、なかなかつらかったなあ。

で、これがほんとに「ウーッ!」といっているのかというと意外や意外「ディロ!」と言っていたのよ、奥さん、知ってた?
スペイン語で"dilo"は英語で"Say it!"「それいけ!」と、バンドをあおるための合いの手の意味があって、そう知って聴けばそう聞こえます。では、ペレス・プラードの特徴が最もよく出ている動画を見てみましょう。" El Ruletero"(タクシー運転手のマンボ)です。どうですか。素晴らしいじゃありませんか!歌って踊るバンドマスター。左隅でマラカスを振っている人がいいですね。

もっと過激なやつを。"Mambo No.8"。踊りはほとんどラジオ体操。Mambo No.1~4,6,7はどうしたんだ、という疑問はごもっともですが、そこはラテンのノリ。最初(ハナ)からそんなものはない。

最もよく"dilo!"と聞こえているのがこの部分。"Si Si…"のあと、たしかに"dilo!"と言ってい(るように聞こえ)ますよね、ね。

で、当番も練習してみました、高速を走る車中で。最初はどう発音していいか分からず試行錯誤しましたが、岐阜から浜松までの間に完成しました。

"dilo!"と発音しようと最大限の努力をしつつ、「ディオ!」に近い発声にするといいようです。ちょうど「ディ」が金管楽器のタンギングの役割をし、破壊力が増します。音そのものは、喉を大きく開き、後頭部で共鳴させるように、音程は「ディ」の「ィ」を最も高く発声します。
浜松から厚木まで、「ディロ!」「ディロ!」で眠気知らず。同乗者がないのも幸いでした。

悩める若人よ、これからは「ア〜、ディロ!」(と言っても、恥ずかしさが消えるワケではありません。)

歌詞と歌

以前、機会に恵まれて、某音楽大学の合唱に関する公開講座に参加したことがありました。 講師は、最近あるコンクールで優勝したという若いソプラノの講師の方と、その大学の教授のバリトンの先生。とても含蓄のあるすばらしいお話でした。 最後に質疑応答の時間が設けられたので、質問してみ...