閉館時間は17時。ところが着いたのは16時。
学芸員の方に展示品の撮影とブログへの掲載をご快諾いただき、急いで回りました。
もちろん、目指すのは階下の管楽器コーナー。
広い地階の一壁面が管楽器コーナーになっています。
この写真だと右手の壁の奥から、金管→木管の順に展示されています。
最初はこれでしょ。
金管楽器のご先祖様、「ルール(Lur)」。
高校生の頃、バンドジャーナルの「金管楽器の歴史」の特集だか別冊だかにありました。その記憶だと、
・青銅器時代の楽器(紀元前1000年頃)
・北欧の泥炭地から発掘される。
・二本一対で発掘されることが多い。
・儀礼や祭祀で用いられたと思われるが、実際に吹奏されたかどうか分からない。
というようなことで、まあ、昔のことですからね、よく分からないことが多いのは仕方ないのですが、それにしてもよくできてるし、よく残ってるなあと感心します。マウスピースも付いているし、吹けば音が出るような感じ。3000年も前のものとは思えません。
ところが、解説板をよく見てみると……
19世紀から20世紀!?
レプリカ(複製品)だったんですね。3000年も前のものではなかった。
まあ、そりゃそうでしょう。本物は泥炭地から発掘されているんですよ。いくら酸素が遮断されていたとは言え、よく見りゃマウスピースの根元に飾りがぶら下がっているじゃありませんか。そこまで保存状態がいいワケありませんよね。
それにしても不思議なかたちです。ベルのように見える部分はベルではなく、管の出口に円盤で装飾を施しているだけなのです。なんか蓮に見えますが、蓮はインド原産の植物なので紀元前に北欧の人々が知っているはずもなく、何なんでしょう、このかたち。謎の多い楽器です。
音は聞いたことありませんが、形状と素材から想像するに、相当荒々しい音がすると思います。
……と思いきや、実物はこんな音でした。結構普通ですね。これは、現代のトランペット奏者かホルン奏者が演奏しているのでこんな現代風な音がするのでは?と思ってしまうほど普通です。もっと荒々しいものを期待していた者としては、ちょっと驚き。そう、「天空の城ラピュタ」でパズーの代吹きが「必殺仕事人」の数原晋だったことを知ったときくらいの驚きがあります。
信号音だけかと思いきや、交響曲第4番「不滅」で有名なデンマークの作曲家・ニールセンが"Lur Signals"というルール二重奏を書いていました。これは珍品中の珍品。ところが、三省堂の「音楽作品名辞典」にも、ウィキペディアにも、そしてお膝元のデンマーク・カール・ニールセン協会の作品リストにも載っていないのです。うーん、なぜだろう。
聴いてみると、「あれ?ホルンじゃないの?」と思いますが、アップした方が"The LUR is not a French Horn."とわざわざ書いているので、これは本物のルールを使っているようです。最初の音源と調が違うようですので、F管とかEs管とかあるのでしょうか?
しかし、これで上の展示品がレプリカである理由が分かるような気がします。実はルールは北欧では案外普通の楽器で、その音楽は日本における雅楽のような位置にあり、ルールの愛好者がいたりして、(超)古典音楽として演奏され続けているのではないでしょうか。だから、ニールセンが二重奏を書くことができたのだし、19~20世紀に楽器を作る理由があったのでしょう。
さて、最初は長文で攻めに攻めたこのブログ。快調に飛ばしていたツケが回り、最近乱視がひどくなって参りました。なので今回はここまで。「浜松市楽器博物館」はこの先まだまだ続きます。
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