2013年5月3日金曜日

浜松市楽器博物館その2

今回はホルンその1。ホルンにヴァルヴが付くまで。

先日横浜中華街に行きました。中華街の外れに、インドやネパールの雑貨や服を扱っている店があり、たまにあっちの金管楽器がぶら下がっていたりするので必ず立ち寄るのですが、今回は本当の「ホルン」がありました。おそらく羊の角にマウスピース様の木の部品をつけたもの。「うわああ」と手にとって試奏させていただきました。その角は2本接続されていて結構な長さがあったせいか、深みのあるいい音がするんですよ。びっくりしました。値段を見てさらにびっくり。2万6千円。ちょっとなあ、と後ろ髪を引かれるような思いで店を後にしました。

"horn"とは、「つの」のこと。まさしく中華街で売っていたあれホルンの真の姿なのでしょう。

本州の北端は下北半島、マグロで有名な青森県大間の土産物屋でホラ貝を見つけました。さんざんホラ貝っぽく吹いて「いやあ、いい音するなあ」と言って置いたら、次に吹いたお客さんはラッパの心得のなかった方らしく、いくら吹いても全然鳴りませんでした。「あのやろう、嘘ばっか言いやがって」と思ったに違いありません。ほら吹きというのが、ラッパ吹きの真の姿なのでしょう。

本当のホラ貝のアンブシャー(としか言いようがない)って、けっこう右に寄っているんですね。なんと、ホラ貝の吹き方の動画もありました。途中淡々と入るナレーションが、中学生の頃聴いていたトランペット教則レコードの中山富士雄先生の語りを彷彿とさせます。
さらに、ホラ貝奏者がトランペットを吹くのも発見。高音域になると超かっこいい!今にも戦が始まりそうです。このように吹いてみたいのは山々ですが、アンブシャーを壊すとまずいのでこれで満足します。でも、トランペットはもうちょっと優しく置いてあげてくださいね。

さて、楽器博物館で最初に展示してあったホルンは、これ。
ビューグルホルン」という楽器。ロンドン製だそうです。こういうのを見ると吹きたくなるんですよね。ラッパ吹きの悲しいさがです。しかも説明板をよく見ると、
日本語の説明はDes管なのに、英語の説明だとD管になってる。こういうことになるとなおさら吹いて確かめたくなるじゃありませんか。罪なお・か・た

ひもが付いているということは、肩にかけて持ち運んだのでしょう。途中の「こぶ」は、吹き込み管とベルの接合部を補強するためのもののようです。ナチュラルトランペットにも同じような「こぶ」がついています。

はい、次。


左上のかわいい水色のが「ポストホルン」、右の大きな緑のが「狩猟ホルン」です。「ポストホルン」は、「郵便が来たぞー」と郵便馬車の御者が吹き鳴らしたホルン。「狩猟ホルン」は「鹿が獲れたぞー」と、狩りの仲間に知らせるホルンです。この動画では、右手をベルに入れていないのが分かります。音色や音程より、音の遠達性を重視していたからでしょう。大きく巻いてあるのは、馬に乗るときに使いやすいよう、肩から斜めに掛けるためです。

ところで当番はiPhoneを使っているのですが、iOS6になったら急に絵文字にポストホルン(しかもクランツ付き!)が出現してびっくりしました。メールとか郵便の絵文字の中にいきなりホルンが出てくるので、これが「ポストホルン」だと分かる日本人がどのくらいいるのか、と考えてしまいました。逆に、欧米では「郵便=ポストホルン」というイメージなのでしょう。文化のギャップを身近に感じます。


これはまたきれいだ。
今でこそ「でんでん虫」と呼ばれ、中はぐるぐる巻きになっているホルンですが、元はこんなにシンプルな楽器だったんですね。これを「ナチュラルホルン」と言います。1800年代の初めまでは、「ホルン」と言えばこれを指しました。有名なモーツァルトのホルン協奏曲もこれで吹かれたわけです。が、このままだと出ない音がたくさんあるので、右手をベルの中に突っ込んで、手で音の出口を開いたり閉じたり半開きにしたりして、音階を出したのです

……ということを高3の時に知った当番(おそらく前回の「ルール」と同じ本で得た知識)は、早速部室に行って使っていないホルンを借用し、ついにロータリーを使わずにF-durを吹くことに成功したのでした。有頂天になる3年生(トランペット)、迷惑がる2年生(ホルン)。早く引退しろよ、と思われたことでしょう。

で、ヘルマン・バウマンがナチュラルホルンでモーツァルトのホルン協奏曲を録音したというので早速買って聴きました。感動しましたねえ。昔のモーツァルトはこう演奏されていたのか、と目から鱗が落ちました。でも、そんなことに感動してないで、受験勉強しろっていう話ですよね。

そろそろ目がかすんで参りましたので、今回はこの辺で。あれ?鱗が落ちたんじゃなかったのか?


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