2013年3月29日金曜日

Block M を少々

"Block M"の季節がやってまいりました。

"Block M"というのはアメリカの作曲家ビリックのマーチ(1955年)です。
マーチに季節もへったくれもないというのはごもっともですが、当番の出身高校では、吹奏楽部の定期演奏会は決まってこの曲がアンコールでした。就職して練習時間がないときは、楽器とミュートを持ってアンコールだけ吹きにいきました。アンケートに「アンコールを吹いていた卒業生がとても楽しそうだった」と書かれて、実に恥ずかしい思いもいたしました。定期演奏会はだいたい3月の最終週くらいに開催されていたので、この時期は「"Block M"の季節」なのです。

高校時代"Block M"が何を意味しているのか全く知りませんでした。恥を忍んで申しますと、こんなものを想像していたのです。



紛う方なき"Block M"。でも、こんな物を素材にしてマーチを作るとは、どんな想像力をしているのか。「スプーン1本でも曲にしてみせる」と言ったのはリヒャルト・シュトラウスだったと思うが、こんなモノをマーチにしてしまうとは……。当時の当番は悩んだのでした。


そのうち、風の噂で(まだWEBのなかった頃ですから)「ミシガン大学がフットボールの試合時に作るM字の人文字」だという情報を小耳に挟みました。そして、こんな感じで想像したのです。



これは、PL学園名物のあれではないか!アメリカにも似たような学校があるんだな、と高校生の当番は思い、だいたい20世紀はそれで暮れていきました。まあ、この人文字を作って、スタンドで吹奏楽団が吹いているんだろう程度の情報と想像だったのです。もっとも、この曲について詳しく書いてある本(例:秋山紀夫『行進曲インデックス218』等)の存在も知らなかったし、タイトルの意味を知らなくても吹くのに困らなかったのですが、何か心にわだかまりがありました。

そして高度情報化社会の到来とともに、真実を知ることとなったのです、「ミシガン大学のマーチングバンドがフットボールの試合時に作るM字の人文字」が真実だったと……。

では、ご覧いただきましょう。どうぞ!

あっと驚く"Block M"。そしてMが歩いて行くよ!。本来ならミシガンまで伺うべきところ、こうして居ながらにして拝見できるとは。いい世の中になったものです。ん?でも、バックで流れているのは"Block M"ではないですね。どうやら"Fighting song"という応援歌のようです。いろいろ探しましたが、ミシガン大学マーチングバンドの演奏はありませんでした。そりゃそうだ。譜面にConcert Marchって書いてあったじゃん。そうか、あれは「座って吹け」という意味だったんですね。「この曲をホールで座って聴きながら、あのBlock Mのフォーメーションを思い出してください」ということなんだ。だから、すこし速めに演奏すると、あのステップが想像できるというわけなんですね。昭和の終わりの高校生にはムリな話ですわ。

で、ミシガン大学座って吹いたのがこれです(ただし、卒業生の楽団)。もうちょっと音質が良いといいんですが。指揮者は最初、なんて言ってるんですかね。「帰ったら白ワインなのさ」とか、「映画に遅れるから速く振るよ」とかのいわゆるアメリカン・ジョークなのでしょうか。

日本の演奏はみんなうまいですね。これで十分じゃないでしょうか。

本場アメリカの演奏を見てみましょう。
まずはアナポリス合同バンドの演奏。これもある意味あっと驚く"Block M".。何が驚くって、この曲の標準タイムはだいたい3分15秒前後ですよ。ところがこれは2分28秒じゃないですか。「うわあ、超っ速(ちょっぱや)だ!」と思って開けてみるとこれだ!

風景も音楽も牧歌的。そうか、第1マーチの繰り返しとトリオの1回目をばっさりカットしているんだ。コーダへのつなぎに入る前の一瞬の沈黙が斬新です。何でこんなに短くする必要があるのか。こんなのどかなコンサートで時間の制約があるとは思えないし、短くしたいならもっと速く振ればいいのに。そうか、速く振ると木管が追いつかないからか。だったらもっと別な曲にした方がよかったんじゃないか、など、疑問のつきない演奏でした。余計なお世話か。すみません。

ちょっと刺激が強かったので、普通の演奏を。おおらかな演奏です。"Best of the Band"と説明があるので、何かのコンクールで優勝したのでしょうか。一方こちらはすてきな演奏ですね。いかにも音楽好きが集まってやってます、といった感じのバンド。普段はジャズとかやってるんでしょうね。最後のhigh Bbがキまりました。ここをキめるのがラッパ吹きの見栄というものです。

アメリカの演奏は、日本に比べるとゆっくりですが、音大生の演奏は速い。これは、音楽性の違いなのか、技術的な問題なのか。ところで気が付いたのですが、コーダに入る直前の三つの和音をリタルダンドしている演奏はありませんでした。もともと譜面にそんな指示はないので、あの演奏法は日本人が開発したもののようです。調べればアメリカの演奏でもそういうのがあるのかもしれませんが、今のところ未見です。皆さんのバンドはいかがですか?

アンコールになるとやはりテンポは上がるもの。本当の超っ速演奏は、こっちです。市立柏高校の演奏が148ぐらいだったのに対し、今計ったらなんと170!指揮者が気持ちよさそう。そりゃこんなにドライブしてたら気持ちいいでしょうよ。コーダは200を超えています。
これもすごい。トランペットのあのフレーズをワウワウミュートで吹くのは結構大変ですが、よく響いてます。コーダが見もの。ここまでやっていいのか。指揮者のアイディア満載です。計ったところ、Naniwoを上回る205を記録!こりゃ盛り上がるわ。高校生、よく頑張った!

ところで、上のNaniwoと桐蔭学園に、ある共通点があるのにお気づきでしょうか?そう、上手側に巨大なコントラバス・クラリネットがあるという点です。だから何、というわけではありませんが……。

ところでトランペッターの皆さん、トリオの後のミュートの処理はどうなさっておいでですか?大所帯のバンドならソリストとその他に分かれて吹けるでしょうが、当番のように人員のあまり余裕のないバンドでばかり吹いていると、ティンパニが「どこどんど」って叩いている間に外さなくてはならないので、いろいろ考えました。目の前に段ボールの箱を置き、中にクッションを敷いてその中に投げ込むとか、トリオの半分を過ぎたら左手でミュートを握って一瞬で外すとか。どれも無理があり、今のところ「素早く外して膝の関節に挟む」というのが妥協案ですが、演出がある場合、これも指揮者がどこで立たせるかによって変わってくるので、流動的です。コメント受け付けていないのに質問してすみません。

ああ、「少々」とか言っておきながら長々書いてしまいました。昨日(もうおとといになっちゃったのか)演奏会が終わったばかりだから早く寝なければ。

もう"Block M"を吹かれた方、お疲れ様でした。これから吹かれる方、Fighting!


追記・その後の調べで、桐蔭学園とNaniwoは、同じ方が振られていることが分かりました。変わらぬスタンスで曲に臨まれる姿勢に敬意を表します。

2013年3月24日日曜日

「大学祝典序曲」の原曲たち(下)

後半2曲は「新入生の歌」と「学生歌」。
これらは「超有名どころ」なので、ここに書くまでもないかもしれませんが……。

まずは「新入生の歌"Was kommt dort von der Höh'?」。

この曲が日本で有名なのは、旺文社の「大学受験ラジオ講座」のテーマ曲として使われていたからです。まだ「予備校」というものが東京ないしは地方主要都市にしかなかった時代、予備校に行かなくても有名な先生方の講義が聴ける、というのはこのラジオ講座しかなかったのです。だから、昭和の中頃から終わりにかけての受験生はこぞって聴いていました。このようなかたちで放送されていたのです。これはラジオ短波での放送ですね。短波放送特有の、音が近くなったり遠くなったりをくりかえしているのがいい感じです。講師も多士済々。渡辺次男先生(なべつぐ・数学)は、参考書でお世話になりました。なつかしい。吉村作治先生もいらっしゃいますが、何を教えていたのでしょうか?当時は入試科目に「ヒエログリフ」があった大学でもあったのでしょうか?

ところが当番はこの番組を聴いたことがありません。AMでこの放送を流していた局の入りが極端に悪く、短波ラジオも高価で手に入らなかったので。というより、平日の夜は部活で疲れて勉強どころではなく、土・日にまとめて勉強していたので、毎日なんか聴いていられなかったというワケです。(だからもっぱら笑福亭鶴光師の楽しいトーク番組ばかり聞いていました。あとはNHKの森繁久弥と加藤道子の「日曜名作座(テーマ曲のみ)」、「日本のメロディー」の中西龍アナウンサーの名句名調子が忘れられません。我ながらシブすぎる。受験生というより隠居。)

原曲は"Was kommt dort von der Höh'?"(あの丘から来るのは何?)。歌詞は「あの丘から来るのは何?--郵便馬車の御者だよ。郵便馬車は何を乗っけてきたんだ?--キツネだよ。」というようなもの。馬に乗って初登校してくる新入生を、在校生が「なんだ?ありゃ。おーい、キツネが馬に乗って来たぞ」といった具合にはやしたてて歌ったもののようです。上のリンク先の画像には、乗馬用のブーツを履いて、馬ならぬ椅子にまたがって入ってくる姿が見られます。この後、新入生と在校生がビールを飲んで歌ってどんちゃん騒ぎをするようです。

この曲を使っているのはブラームスだけではなく、「軽騎兵」でおなじみのスッペも、この曲を使って、やっぱり"Was kommt dort von der Höh'?"という曲を書いています。いやあ、この演奏、まさしく「鼓笛隊」ですね。鼓と笛しかない。こういう編成をなんと言うんでしょうか?あ、鼓笛隊か。よく、ドイツマーチの始まりや曲間のつなぎにこの編成の短い曲が置かれますが、あれと何か関係があるんでしょうか。当番にはよく分かりません。やはりフルートの世界は奥深い。時間ができたら特集してみます。最後の喝采は、木琴の彼に捧げられたものですね、きっと。

こんな陽気な歌をブラームスはやはりどんちゃん騒ぎ的に使っているのですが、テーマに使ったり、展開部に使ったり、コーダの直前に使ったり、さら冒頭の八分音符四つの動機もここから来ていることを考えれば、この曲こそ「大学祝典序曲」の核をなす曲だと言えるでしょう。

最後は「学生歌"Gaudeamus igitur"」

日本では「我がゆく道は/遥けきかなた」という歌詞がついています(詞:岡本敏明)
ヨーロッパ全土で「学生の歌」として知られており、ヨーロッパにおける国際的な催しではよく歌われているようです。
歌詞はラテン語。ラテン語はヨーロッパ知識人の共通言語です。だからこの曲はドイツで作られたのにもかかわらず、ヨーロッパ全土に広がったのですね。
1番から3番までは、胸にぐっときますね。日本の「無常観」に通じるものがあります。その後もいい歌詞が続きます。

超有名曲だけに演奏も山のようにあるのですが、まずは合唱
ポルトガルのポルト大学合唱団。ガウンを羽織るのは、この曲が卒業式に多く歌われているからです。「大学祝典序曲」のテンポからすると結構速いですね。よく見ると、男女が交互に並んでいます。あまり見たことのない配置ですが、日本ではどうなのでしょうか。
おお、すごいと思ったのがイリノイ大学男声合唱団。荘厳な歌いっぷりです。緩急強弱自由自在。イリノイ大学と言えば、あのマーク・ハインズレー先生がいらっしゃった大学。音楽サークルのレベルは高いようです。
モスクワ物理工科大学男声合唱団記念演奏会での演奏。指揮は…?学長さんか、あるいは創設時の先生もしれませんね。お年を召した方もいらっしゃるので、卒業生も入っているのでしょう。「創団50周年記念演奏会最後の曲」なので、会場は全員起立しています。最後に女声が入ってくるのがいいですね。
ソロで。アメリカの名テノールマリオ・ランツァの独唱。この人は将来を嘱望されながら1959年に38歳の若さで亡くなっています。残念です。
金管五重奏で。アメリカのオルブライト大学金管クインテットの演奏。演奏内容はともかく、テューバのあなた、そんな持ち方をしていたら管が外れますよ!
吹奏楽で。イギリスの名門、コールドストリーム・ガードの演奏。さすがにイギリスを代表する軍楽隊だけあってうまいのですが、何か違和感が……。そう、3拍子の曲を4拍子にしちゃってるので、なんだかな、といった感は否めません。

ブラームスはこの曲を「大学祝典序曲」の大団円に用いました。壮大なオーケストレーションが、学生たちに対するブラームスの気持ちを表しているようです。その気持ちは全ヨーロッパの学生たちに向けられています。ブラームス自身は大学に行くことはできませんでしたが、「学生たち、しっかりやれよ」という気持ちが(たとえ義理で作曲したにしても)伝わってくるようではありませんか。


お上(かみ)が初めて大学を作った日本とは違い、学びたい者(学生)が組合(ギルド)を作って師を求めたのがその始まりであるヨーロッパにおいて、学生の団結は自分たちの学びを保障するいしずえであったがために、このようなたくさんの学生歌が生まれた、という背景を知っておくのもいいかもしれません。
日本には似たような歌に、旧制高校(戦前までの高等学校)の「寮歌」というものがあり、当番も学生時代にはよく覚えて歌ったものです(あ、私は大学在学中に元号が平成に変わった頃の学生です)が、ヨーロッパほどは一般化していませんね。

ドイツの学生歌についてもっと詳しく知りたい方には、ライムント・ラング著・長友雅美訳『ドイツ学生歌の世界 -その言語文化的断面(ISBNコード: 9784883953707)』をおすすめします。


2013年3月23日土曜日

「大学祝典序曲」の原曲たち(上)

ブラームスの「大学祝典序曲」は、4曲のドイツ学生歌を含んでいますが、今回はその原曲たち(のうちまず2曲)を聴いてみましょう。

まずは、金管のコラールが美しい「僕らは立派な校舎を建てた」(Wir hatten gebauet ein stattliches Haus)。国立音楽大学の資料(PDF)によれば、「1819年にイェーナ大学の学生組合が解散するときに作った曲」とありますが、疑問が湧きます。まず、「学生がなぜ校舎を建てるのか?」そして「学生組合が解散するときに歌なんぞ作るのか?」という点です。

順序が逆になりますが、「イェーナ大学の学生組合とは何か」という点を調べてみると、これはブルシェンシャフト(Burschenschaft)という、愛国的な学生運動の組織のことでした。「ウィーン体制のドイツで起こった、自由主義とナショナリズムの結びついた運動を起こした学生組織。」と、「世界史の窓」というページで解説されているので、世界史の学習内容でもあるのでしょう。(当番は地理・日本史選択だったので……。)
ところがこの学生運動が過激になっていき、メッテルニヒによって弾圧され、1819年イェーナ大学の学生組合は解散させられてしまう。組合員の一人、カール・ザントが、ロシアのスパイという疑いをかけられていた劇作家・コッツェブーを暗殺するという事件を起こしてしまったからです。

歌詞は8番まであります。大意は、「我々は立派な校舎を建てて静かに暮らしていたが、裏切りによって疑いをかけられた。そこで我々は団結した。しかし、校舎は崩れようとしている。この苦難の時に必要なものは何か。魂は我々の中にあり、神は我らの砦なのだ。」当番の貧弱なドイツ語力ではここら辺が限界ですが、ここで最初の疑問も氷解します。「校舎」というのは、実際の校舎のことではなく「学生組合」のことだったんですね。要は「暗殺事件の嫌疑を受けて弾圧され、残念ながら学生組合は解散するが、まだやってくぞ、神のご加護を!」というような歌詞だったわけです。実際、その後この組合は地下に潜り、秘密結社化してゆくことになります。

で、歌詞より曲の方が大事なんですが、先ほどの国立音大の資料によると実はなんと、この曲は元々あった民謡にアウグスト・フォン・ビンツァーという人が上のような長々しい詞をつけたものだったのです。歌詞とは全く関係なかったんですねえ。はあ……。

学生が歌うとこんな感じですが、タイトルロールに「マールブルク・ブルシェンシャフト」と出てきてびっくりします。まだあるのか、ブルシェンシャフト!と思って辞書を引いたら、「学友会」とありました。日本で言えば学生自治会に近いのでしょうか。リラックスした感じの演奏もありました。ビールを飲みながら歌うにはこっちの方が良さそうです。割合にアップテンポな曲を荘重な金管コラールにしてしまうブラームスの手腕よ!

参考演奏としてベルリンフィルが演奏するとこうなるのですが、太平洋の島国ミクロネシア連邦国歌にもなっているのが驚きです。また1820年には同じ旋律を使って"Ich hab mich ergeben"という愛国歌も作られています。魅力ある旋律なのでしょう。このテンポだと「大学祝典序曲」に近いかな。でも、この演奏が「大学祝典序曲」のテンポに影響されている可能性もあります。

ちょっと疑問。Wir hatten gebauet ein stattliches Haus.は過去完了の文だから、「我らは立派な校舎を建てていた」という訳の方がいいような気がします。「……だけど今はもうないよ。」という意味が込められているのが上のことからも分かりますよね。でも「我らは立派な校舎を建てていた」あるいは「我らは立派な校舎を建てていたのにぃ」では、くどいですね。いいっす、今のままで

次いきましょう

次は「祖国の父」(Landesvater)。当番が初めてこれを聴いたのは、ウィーンの名バリトンエーリヒ・クンツの名唱でした。張りのある堂々とした歌い方に感激したのは高校3年生の時だったと記憶しています。

しかし、レコードジャケットに記されていた邦題は「ランデスファーターの歌」。当時ドイツ語を知らなかった当番は何のことやら分かりませんでした。やがて大学に入りドイツ語を学ぶようになって、辞書を引いたら、「Landesvater:国民の父、主君」とあって、なにやら国王をたたえる歌ではないかと思うようになりました。が、時折ブラームス関係の本を読んで「大学祝典序曲」に触れている部分があると、「御国(みくに)の父君(ちちぎみ)」という大仰な訳から「国の親父」というクダけた訳まであって、再び混乱するのでした。当時、地方大学で親から仕送りを受けていた当番は、「故郷(くに)にいる父親からの仕送りに感謝する歌」なのか?と混迷の度合いを深めていきました。

調べてみると、ドイツの学生組織に「撃剣系学士会」というものがあり、「侮辱されれば決闘メンズーア)で決着をつける」ことを規約としたものがありました。これは痛そう。で、その入会儀式の時に歌われるのがこの歌だったのです。歌詞の冒頭を採って"Alles schweige"(全員静粛に!)と呼ばれますが、いかにも厳粛な儀式が始まる、といった趣の歌い出しです。……あれ?"Landesvater"という曲名ではないの?

という疑問を胸にさらに調べてゆくと、その入会儀式は、剣で帽子を串刺しにするものでした。細かい儀式の内容はここでは省略。先ほどのクンツの画像に出てきましたが、4人の学生がそれぞれ腕を組み合い、会員のかぶっている帽子をこの絵ではそれぞれ3つずつ串刺しにしています。(もうちょっと大きい画像はこちら。)で、この儀式のことをランデスファーターと称するのです。そうか、だから「ランデスファーター歌」なのか。「ランデスファーターという儀式で歌う歌。本名"Alles schweige"」という意味だったんですね。ようやく分かった!

歌詞の内容は、これも11番まである長い詞ですが、もう、ドイツへの忠誠を誓う内容一辺倒です。2番に「ドイツの息子たち(Deutschlands Söhne,)よ、高らかに我が祖国(Vaterland)の歌が響いてくる。祖国の歌が!」とあるので、「息子たち(Söhne)」に対する「父(Vater)」、すなわち「祖国(Vaterand)」を擬人化したものが"Landesvater"なのではないか、というのが今のところの結論です。だから、無理矢理訳さずに、「ランデスファーターの歌」でいいんですね。クンツのジャケットを書いた方は、見識があったわけです。

「大学祝典序曲」では、後半のメロディーが用いられています。「撃剣系学士会」とか「決闘」とは正反対なレガートなメロディーとして出てきますが、これもブラームスのユーモアのように思えます。

後半は、次回。

2013年3月18日月曜日

フェルデの「結婚行進曲」



ノルウェーのジャズトランペッターにして作曲家のヤン・マグネ・フェルデ(Jan Magne  Førde 1962~)の「結婚行進曲」(Bruremarsj)は、日本ではほとんど知られていない曲です。

当番がこの曲に出会ったのは、いまから7~8年前ですかね。「ケルトの叫び」を聴こうと思ってノルウェー海軍バンドの"Crossover"というCDを買ったところ、その冒頭に入っていたのがこの曲でした。

「行進曲」のはずなのに、途中サックスのソロ(ソプラノからテナーまで?)が入っていたりスウィングしていたりと、ジャズの要素が結構強くて、とてもおもしろい曲だと思ったものでした。

当番が初めて聴いたのは上述の通り吹奏楽でしたが、おそらく作曲者のバンド、"Brazz Brothers"による演奏が「原曲」なんでしょうね。なかなかシブいクインテットです。トランペットを振り回すように吹いているのが、作曲者のフェルデ氏です。もとがこうだから、ジャズっぽくなるんでしょうね、というよりジャズです。後ろの軍楽隊の人もノッてます。

で、調べてみるとこれが北欧で大人気。作曲は1992年ですが、スコアの表紙の裏には「音楽家のあいだで人気のこの曲は、ノルウェーでは年間数百の結婚式で演奏されている」と書かれています。「数百」?本当か?

ああ、本当に使われていますね。すばらしい!いかにも結婚式ですね。メロディーをヴァイオリンで弾いてるのは、北欧音楽の特徴でしょう。民謡で使われるときには「ヴァイオリン」ではなく「フィドル」といいます。北欧のものは、きれいな装飾を施しているものもあります。

このビデオもいいですねえ。BGMに使われています(45秒過ぎから)。これもまた結婚式ですね。ノルウェーのリフョルデンという所だそうです。すてきすぎる!ノルウェーではこういう結婚式があるんだ。もう、出席者全員が新郎新婦を祝福しています。いとめでたければ涙流しはべりぬ。Siriさん、Gusさん、末永くお幸せに。

教会関係ではパイプオルガンと2本のトランペットの演奏があります。いやあ、このトランペット吹いてみたい!9歳のアゴット君と13歳のトロンド君の演奏です。「天使のラッパ」ってやつですね。

マーチングもまたおもしろい。アメリカンなヤツではなく、ブリティッシュでスクウェアなフロアドリルです。後半が面白い。ドラムメジャーが踊ってます。お客さんも楽しそう。「サンダーバード」のDVDのエンドロールでロイヤル・マリーンズ・バンドがしびれるようなドリルを披露していたのを思い出しました。

吹奏楽の演奏はParnu Muusikakooli puhkpilliorkesterのもの。今回演奏する譜面と同じだと思います(Perc.はアレンジしてありますね)。大人から子供までいる市民バンドのようです。子供は学校の吹奏楽部、大人は社会人バンドという住み分けがはっきりしている日本とはずいぶん雰囲気が違います。パルヌというのは、エストニアの南にある町だというんですが……。どこ?

ブラスバンドについては「『大学祝典序曲』編曲あれこれ」をご覧いただくことにして、Knarvik Skulekorpsによるブラスバンド演奏を。このバンドも前回の救世軍バンドと同じく、コの字型の配置です。一般にブラスバンドというのはこういう配置が多いようです。吹奏楽やオーケストラに比べて省スペースでいいですね。2曲目のテナーホルンのソロがいい音色。"Lark in the Clear Air"という曲だそうです。当番はテナーホルンの音色が大好きなのですが、買っても吹くところがないからねぇ。アメリカのフロリダでも演ってます。"Banda del Cuerpo Central con refuerzos de la Banda Divisional y de Playa Ancha."というバンド(合同バンド?)のようですが、スペインのバンドなのか、南米のバンドなのか、アメリカンヒスパニックのバンドなのか分かりません。Tp.ソロがんばってます。

ノルウェーは吹奏楽がとても盛んな国で、Wikipediaでノルウェーのバンド一覧を索くと、かなりの数のバンドがあることが分かります(ただしノルウェー語)。ノルウェー吹連のHPも充実(ただしノルウェー語)。


さて、この曲は合唱でも人気があります。

まずはノルウェー・スコラ・カントゥルムの演奏を。韓国でのツアーのようですが、後半、合唱団がフィンガースナップを始めたところで聴衆が戸惑い、そのうちに会場が一体となって溶け合っていく様子がよく分かります。歌詞はありません(「スキャット」といいます)。
次にストックホルム王立音楽大学室内合唱団。伴奏がアコーディオンというのもまた民族音楽っぽくていいですが、みなさん実に楽しそうに歌ってます。フィンガースナップと足ドン(正式名称なんて言うんですか?)は、おそらく楽譜の指示ですね。全員黒を着ていますが、よく見ると全員ちがうキメかたをしています。センスがいい。

ピアノ独奏もあります。調律めちゃくちゃですが、背景に見える椅子と絵が趣味を感じさせます。時折見える金髪からすると、女性が弾いているようですね。

ノルウェーという国は民族音楽が豊かなお国柄で、「エスタダーレンの結婚行進曲」「ヴァルソイフィヨルドの結婚行進曲」「セリョルドの結婚行進曲」など、ほかにもたくさんあって紹介しきれないほどです。地域ごとに「結婚行進曲」があるんですね。グリーグが自国の民謡に熱中したのも分かります。


ノルウェーの吹奏楽曲といえば名曲「ヴァルドレス」くらいしか我々は知りません。これだけ吹奏楽が盛んな国なのだから、すてきな曲がまだまだたくさんあるはずです。ただ、譜面を手に入れるのが容易でない。どこかの出版社が取り扱ってくださいませんかねぇ。


【おまけ】

なんとフェルデはもう一曲「結婚行進曲」を作っていたのです。それが、「ベイアーンの結婚行進曲」。フェルデらしく、トランペットソロの曲です。これは今回初めて知りました。こんなに気持ちよく吹いてみたい。

2013年3月14日木曜日

ケルトミュージックと"Passages"

ケルト人というのは、おおざっぱに言ってゲルマン人がヨーロッパに入ってくる前からヨーロッパに住んでいた人々のことを言う。ゲルマン人によって駆逐された結果、ヨーロッパの辺縁にわずかに残ることとなった。

現在では主にアイルランド、スコットランド、ウェールズ、フランスのブルターニュ地方などに住んでいて、独自の言語や文化を持っている。

そういえば、「ウェールズの歌」なんていう曲もありましたね。これ、小学生が吹いてんの!?

で、"Passages"に色濃く反映されているケルト・ミュージックですが、これは、アイルランドのケルトミュージック(=アイリッシュ・ミュージック)に近いような気がします。アイリッシュ・ミュージックといえば、映画「タイタニック」の「3等船室でのアイリッシュ・パーティー」の場面で耳なじみの方もいらっしゃるのでは。アイルランドは近代になって深刻な飢饉(ジャガイモ飢饉)に見舞われ、アメリカに多くの移民を出しました。一説に1900年代初めには、アイルランドの人口は半減してしまったとも言われています。だから、タイタニックにも、多くのアイルランド人が乗っていたのです。(3等船室に乗っていたのは、移民の多くが貧しい人々だったから。)

で、世界で最も有名なアイリッシュ・ミュージックのグループと言えば、「チーフタンズThe Chieftains)」でしょう。当番がおすすめするのは、メンバーでもあるマット・モロイ自身が経営するパブでのライブ、その名も”Live from Matt Molloy's Pub”。ここにはありませんが映像で見ると、狭いパブにぎゅうぎゅう詰めになって演奏しています。元来こういうスタイルでやっていたみたいですね
それから、"The Donegal Set"も、アイリッシュ・ミュージックの特徴をよく表しています。"set"とは何曲かのメドレーのことを言うようです。曲が変わるときにテンポも拍子も変わったりするのですが、指揮者もいないのにどうして揃うの?と、いつも驚きます。もちろん、譜面なんか誰も見てないんですよ。

で、このケルトミュージックたるアイリッシュ・ミュージックがアメリカに渡り、アイルランド人のコミュニティーで演奏されるようになります。それにバンジョーなどが加わり「ヒルビリー・ミュージック」となり(これは楽しそう!)、歌も加わって「カントリー・ミュージック」となります。さらに黒人音楽発祥の「ロックンロール」と融合して「ロカビリー」となり、そこから出た不世出のスターエルヴィス・プレスリーがミュージシャンたちに衝撃的な影響を与え、今日のアメリカン・ミュージックができあがった、というのが大まかな流れです。

つまり、現代のアメリカン(ポピュラー)ミュージックをさかのぼってたどっていくと、ケルトミュージックにたどり着くという図式がこれでおわかりになるでしょう。

"passage"という語を辞書で引くと、「音楽のワンフレーズ」という意味とともに、「時間の経過」とか「移住」「航海」「変遷(へんせん:移り変わり)」などの意味があります。

スウィーニーは、現代アメリカ音楽の祖先であるケルトミュージックが、アイルランドから「航海」してきた「移住」者によってアメリカにたどり着き、「時間の経過」にともなう「変遷」により自らの血肉となってこの「音楽のワンフレーズ」になった、ということを表現しようとしているのではないでしょうか。時間的にも空間的にも、実に壮大ですね。

そう考えると、よくできたタイトルだとは思いませんか?

2013年3月13日水曜日

エディンバラ・サンバ!

1995年12月30日、当番はスコットランドの首都・エディンバラにおりました。いやもう、寒いのなんの。
エディンバラは北緯55度でモスクワとほぼ同じ緯度。駅前に露天のスケートリンクが開業していたので、かなりの寒さだったと思います。

岩山のてっぺんのエディンバラ城を見物して、市街地におりてくる途中、不思議なものを見ました。

よく見えませんが、後ろの横断幕には"The Edinburgh Samba"と書かれています。煤煙にすすけた古い建物に囲まれた広場で、昨日雪が降ったであろう陰鬱な空の下、この真冬の氷点下のエディンバラで、緩いリズムで覇気もなく、サンバを踊りもせずただ叩いている人々よ!
右端の張りぼてだか着ぐるみが何をするでもなくじっと突っ立っていたのがこのサンバのシュールさを引き立てていました。

この写真では切れていますが、左側に地元テレビ局のクルーがいます。でも、それ以外に見物人もなく、いったい何の目的で真冬にサンバをやっているのか全く理解できませんでした。

不思議なものを見た、と思って町へ下っていく途中、さらに不思議なものを見ました。


「アハハハ」じゃねえだろ!

丸めがねの向こうには"Jokes & Novelties"とあり、「日曜開店!」
「カード使えます!」「セール!」と貼り紙がありましたが、ブラックジョークのお国柄ゆえ、シャレのきついものがあってもイヤなので、結局入らずじまいでした。



このあと、駅からちょっと歩いたところにある、石造りのよさげなホテルに泊まった当番と友人N。
夜明け方に火災報知器のベルで目が覚めました。
寝起きでボケっとしているところにいきなりドアを叩く音。開けてみると、イギリス人の老夫婦が「非常口はどっちですか!?」当番が親切に教えてあげると、「ありがとう。ところで君たちは逃げないのかね?」
ここでようやく事態を悟った当番が、Nに「おい、逃げるぞ」と言ったとたん、老夫婦を追いかけるように走ってきたボーイさんに「早く逃げてください!」と言われ、飛ぶようにして外に逃げたのでした。

もう消防車が到着して消火活動をしていました。どうやら地下のバーから出火した様子で、石の階段の上を何本もホースが這っています。夜明け前。寒いったらありゃしない。
逃げてきた人々がホテルを心配そうに眺めています。毛布をかぶった人、カーラーを巻いたままのご婦人。ところが、中に変なやつがいました。

この絵の人から、上着を取った格好でいる青年
真っ赤なハイソックスに靴も履かず、赤いタータンチェックのキルトにYシャツで、困ったようにウロウロしているのです。

キルトはスコットランドの伝統衣装だから、着ていて別に不思議はないけれど、どうして明け方の4時になるかならないかの時間にもうキミは準備しているのか。そりゃ今日は大晦日だから、スコットランド中からキルトを着た人々がこのエディンバラに集まってくるらしいけれど、ちょっと浮かれすぎではあるまいか

結局その後、宿には連泊できずロンドンに戻ることになったのですが、いやあ、エディンバラというのはなかなかおもしろいところでした。

ところで現在のエディンバラのサンバシーンはどうなっているのか。彼らの末裔が季節もわきまえずわびしくサンバのリズムを叩いているのかと思いきや、なんとエディンバラ・サンバスクールという学校ができて、パレードなども行われている様子。まことに慶賀の至り。「音楽に国境なし」とはまさにこのことですね。

2013年3月12日火曜日

「大学祝典序曲」編曲あれこれ



まず目指すのはこれマーク・ハインズレー本人の指揮によるイリノイ大学吹奏楽団1987年の録音。テンポはともかく、響きの印象はこんな感じになる。ハインズレーはイリノイ大学吹奏楽団のためにこの編曲をした、とスコアの表紙の裏に書いてありました。

ハインズレー版にはほかにインディアナポリスシンフォニックバンドによる演奏もあるが、トランペットが残念。途中、マイクをたたくような音がした直後、劇的に音質がよくなるのはなぜか。アメリカの高校にもコンクールがあるらしく、Cypress Falls High Schoolによる演奏は、リキが入っていてよろしい。それにしてもあちらのコンクールは客を入れないでやるのだろうか?制服がないから礼服や黒のロングドレスを着ていて、高校生ながら大人びて見える。

あっと驚くのがスウェアリンジェン版。「あっ」と驚いている間に終わってしまうのがさらに驚きだ。まさに名匠スウェアリンジェン先生の力業(ちからわざ)。指揮者がレイをかけているところや学校名からすると、ハワイの高校のようだ。バスドラのキミ、家で何があったか知らないが、そんなに投げやりになるなよ。3分。

もっとびっくりするのが謎の編曲版。冒頭のティンパニに驚いていてはいけない。サフラネク版のカットなのだろうか?それともカーナウ版か?……と、聴きながらキーボードを打っていたらもう終わってしまった。 Mr. Lee Sing Wanという人が撮ったとしか書いていない。おそらく台湾の学校のような気がするが、いかがか。2分34秒。

お耳直しに、合唱付きのオケ版を。元々がオケ曲だから「オケ版」というのもおかしいが、ロンドンの夏の風物詩"BBC Proms"から。さいごの"Gaudeamus"に合唱がついている。「フィンランディア」のおしまいに合唱がついているのはたまに聴くが、これは珍しいのではないかな。"Gaudeamus"の歌詞はこちら

さて、今度は変わった編成
最初はフルートオーケストラの演奏。左に立っているのは、コントラバス・フルート。フルートは息を半分捨てているそうだから、コントラバス・フルートになってしまうといったいどれくらい息が持つのか心配になってくる。(さらに低音のダブルコントラバス・フルートになると、もうファンを回した方がいいのではないかと思えてくる。)このBallygowan Flute Bandは、実力のある有名なバンドだそうです。フルート界の奥は深い。何はともあれ、典雅な笛の響きもまたいいものですね。

次はブラスバンドの演奏。「ブラバン」ではありませんよ。「金管楽器と打楽器で構成されたバンド」のことです。木管なし。イギリスで発達したバンド形式なので「英国式ブラスバンド」と呼ぶこともあります。コルネットやフリューゲルホーン、テナーホルンといった、主に円錐管の楽器(「サクソルン」と呼ぶこともある)で構成されていますが、不思議なことにフレンチホルンは入っていないんですね。炭鉱労働者のレジャーとして発達したという背景があるので、あまり高価な楽器は入らなかったのでしょうか?円筒管のトロンボーンは入ってます。最高音を受け持つのはEsコルネット。演奏はイングランドの港町ブリストルの「ノーウィッチ・シタデル救世軍バンド」です。救世軍(とは言っても、キリスト教の一教派)バンドは英国式ブラスバンドの嚆矢といわれていますから、伝統的なスタイルを伝えていると言えるでしょう。教会で演奏するのでこういう配置になってるようですが……でも、狭いね。

鍵盤楽器となると、もはや「編成」とは言えないかもしれませんが、ピアノ連弾なら、かろうじて「二人編成」と言えようか?オケ曲をピアノにすると、飾りが取れて曲の構造がよく分かるようになります。4手になるとさすがに音量もあって、迫力ありますね。おそらくブラームス本人の編曲でしょう。(途中カットあり)
最後は「楽器の王様」パイプオルガンによる演奏。弾いている人自身の編曲だそうですが、Keller によるピアノ独奏版があるので、あるいはそこからのアレンジかも。見ていると、オルガニストって、いろいろと忙しいんですね。丸い取っ手(「ストップ」という)を出し入れして、音色を変えています。ストップや多段鍵盤を操作する様子は「演奏家」というよりも「パイロット」という印象です。パイプの音よりもマシンノイズの方が大きいような気もしますが、古来パイプオルガンの録音の難しさに録音エンジニアたちが頭を悩ませてきたことを考えると、カメラをここに置いたのは正解だったかも。あるいは自分の動きを記録しておきたかったのかな。給食当番がロンドンのセントポール大聖堂のクリスマス・ミサで聴いたパイプオルガンは圧巻でした。楽器というより「宗教装置」ですね。あれじゃ神様を信じちゃうよ。

おまけといっては大変失礼ですが、コントラバシスト必見!
テキサス工科大学助教授、ラボック交響楽団の首席コントラバス奏者、マーク・モートン氏の模範演奏です(Maestoso,3/4から)。最初の注意事項は各自聴き取ってね。それにしてもこんなにクリスピーでデカい音が出るんですね!

このほかにも(注意:PDFが開きます→)1stTp.を見ただけでも「ごちそうさま」と言ってしまいそうな金管四重奏版や、8手ピアノ版(あの椅子にどうやって4人も座るの?あ、ピアノ2台にするんだ。4台でもいいんでしょ?だめなの?ああ、ホールに2台しかないんだ。ヤマハとベーゼン?ベーゼン出すの?高いよ。1台はリハ室のアップライトでもいいんじゃないの?だめ。なんで?ああ、その日合唱団の練習が入ってるんだ、というやりとりが必ずあるように思われる。)や、先ほどパイプオルガンのところで触れたピアノ独奏版などがあります。

これだけ編曲が多いということは、この曲がそれだけ魅力的で、何とか自分のフィールドで演奏したいと思う人が多かったからでしょう。
この曲をあまり評価しない指揮者もいるようですが、どっこい結構人気のある曲なのでありました。







4本のホルンのためのコンチェルトシュトゥック

シューマン作曲のこの曲は、ソリスト4人がそれぞれ超絶技巧を要求される曲として知られていますが、海上自衛隊東京音楽隊のこの演奏(第1楽章のみ)は、下手なオケよりよっぽど立派な演奏です。
吹奏楽でここまでできるとは……。


個人的にはこの曲大好きです。「ライン」を思い出させます。
でも、本当に難しいのは3楽章でしょうね(オケはスペインのガリシア交響楽団)。いや、吹いたことないから分からないけど。あ、俺ホルン吹けなかったんだ。

怖いもの見たさに譜面を見てみると(注意:PDFが開きます。2ndから4thは、スクロールした先にあります。)……
2ndが一番きついみたい。ジャズのパート割りに似てますね。そういえば自衛隊ではいちばん階級が高い人が2ndを吹いてました。

ちなみに、現役の在京プロオケのホルン吹きが吹くとこんなこんな感じ。

お後がよろしいようで……。

後生、畏るべし

リヒャルト・シュトラウス ホルン協奏曲第1番第3楽章

鈴木優さん、このとき高校3年生。オケは岩村力 指揮 群馬交響楽団です。
鈴木さんはその後、藝大に進学されたそうですが、当然と言えましょう。
喫驚(びっくり)しました。自分がホルン吹きじゃなくてよかった。

鈴木さんの現況はこちら

ロシア人の11歳Александр Труфанов君)がんばってモーツァルトを吹いているけど、さすがに高音域は音程が下がる。がんばれ!Александр君。名前の通り、楽器もアレキなのか!?

小学生がサキソフォンでデュポアの作品を熱演しているのもすばらしい。自分がサックス吹きじゃなくてよかった。

しかし、「神童」は往々にして行く末伸び悩むことが多い。バイオリンの渡辺茂夫のような悲劇もあります。この皆さんにはぜひ大成してもらいたいですね。
なお、私、給食当番は大器最晩成型で、今はその才能の片鱗も見えていません。ご期待ください。

給食室、開設。

給食当番が栄養のあるものを配膳するブログ。ほとんどYouTube製。
一日30品目は無理ですが、いろんなものを食べましょう。

歌詞と歌

以前、機会に恵まれて、某音楽大学の合唱に関する公開講座に参加したことがありました。 講師は、最近あるコンクールで優勝したという若いソプラノの講師の方と、その大学の教授のバリトンの先生。とても含蓄のあるすばらしいお話でした。 最後に質疑応答の時間が設けられたので、質問してみ...