2013年3月12日火曜日

「大学祝典序曲」編曲あれこれ



まず目指すのはこれマーク・ハインズレー本人の指揮によるイリノイ大学吹奏楽団1987年の録音。テンポはともかく、響きの印象はこんな感じになる。ハインズレーはイリノイ大学吹奏楽団のためにこの編曲をした、とスコアの表紙の裏に書いてありました。

ハインズレー版にはほかにインディアナポリスシンフォニックバンドによる演奏もあるが、トランペットが残念。途中、マイクをたたくような音がした直後、劇的に音質がよくなるのはなぜか。アメリカの高校にもコンクールがあるらしく、Cypress Falls High Schoolによる演奏は、リキが入っていてよろしい。それにしてもあちらのコンクールは客を入れないでやるのだろうか?制服がないから礼服や黒のロングドレスを着ていて、高校生ながら大人びて見える。

あっと驚くのがスウェアリンジェン版。「あっ」と驚いている間に終わってしまうのがさらに驚きだ。まさに名匠スウェアリンジェン先生の力業(ちからわざ)。指揮者がレイをかけているところや学校名からすると、ハワイの高校のようだ。バスドラのキミ、家で何があったか知らないが、そんなに投げやりになるなよ。3分。

もっとびっくりするのが謎の編曲版。冒頭のティンパニに驚いていてはいけない。サフラネク版のカットなのだろうか?それともカーナウ版か?……と、聴きながらキーボードを打っていたらもう終わってしまった。 Mr. Lee Sing Wanという人が撮ったとしか書いていない。おそらく台湾の学校のような気がするが、いかがか。2分34秒。

お耳直しに、合唱付きのオケ版を。元々がオケ曲だから「オケ版」というのもおかしいが、ロンドンの夏の風物詩"BBC Proms"から。さいごの"Gaudeamus"に合唱がついている。「フィンランディア」のおしまいに合唱がついているのはたまに聴くが、これは珍しいのではないかな。"Gaudeamus"の歌詞はこちら

さて、今度は変わった編成
最初はフルートオーケストラの演奏。左に立っているのは、コントラバス・フルート。フルートは息を半分捨てているそうだから、コントラバス・フルートになってしまうといったいどれくらい息が持つのか心配になってくる。(さらに低音のダブルコントラバス・フルートになると、もうファンを回した方がいいのではないかと思えてくる。)このBallygowan Flute Bandは、実力のある有名なバンドだそうです。フルート界の奥は深い。何はともあれ、典雅な笛の響きもまたいいものですね。

次はブラスバンドの演奏。「ブラバン」ではありませんよ。「金管楽器と打楽器で構成されたバンド」のことです。木管なし。イギリスで発達したバンド形式なので「英国式ブラスバンド」と呼ぶこともあります。コルネットやフリューゲルホーン、テナーホルンといった、主に円錐管の楽器(「サクソルン」と呼ぶこともある)で構成されていますが、不思議なことにフレンチホルンは入っていないんですね。炭鉱労働者のレジャーとして発達したという背景があるので、あまり高価な楽器は入らなかったのでしょうか?円筒管のトロンボーンは入ってます。最高音を受け持つのはEsコルネット。演奏はイングランドの港町ブリストルの「ノーウィッチ・シタデル救世軍バンド」です。救世軍(とは言っても、キリスト教の一教派)バンドは英国式ブラスバンドの嚆矢といわれていますから、伝統的なスタイルを伝えていると言えるでしょう。教会で演奏するのでこういう配置になってるようですが……でも、狭いね。

鍵盤楽器となると、もはや「編成」とは言えないかもしれませんが、ピアノ連弾なら、かろうじて「二人編成」と言えようか?オケ曲をピアノにすると、飾りが取れて曲の構造がよく分かるようになります。4手になるとさすがに音量もあって、迫力ありますね。おそらくブラームス本人の編曲でしょう。(途中カットあり)
最後は「楽器の王様」パイプオルガンによる演奏。弾いている人自身の編曲だそうですが、Keller によるピアノ独奏版があるので、あるいはそこからのアレンジかも。見ていると、オルガニストって、いろいろと忙しいんですね。丸い取っ手(「ストップ」という)を出し入れして、音色を変えています。ストップや多段鍵盤を操作する様子は「演奏家」というよりも「パイロット」という印象です。パイプの音よりもマシンノイズの方が大きいような気もしますが、古来パイプオルガンの録音の難しさに録音エンジニアたちが頭を悩ませてきたことを考えると、カメラをここに置いたのは正解だったかも。あるいは自分の動きを記録しておきたかったのかな。給食当番がロンドンのセントポール大聖堂のクリスマス・ミサで聴いたパイプオルガンは圧巻でした。楽器というより「宗教装置」ですね。あれじゃ神様を信じちゃうよ。

おまけといっては大変失礼ですが、コントラバシスト必見!
テキサス工科大学助教授、ラボック交響楽団の首席コントラバス奏者、マーク・モートン氏の模範演奏です(Maestoso,3/4から)。最初の注意事項は各自聴き取ってね。それにしてもこんなにクリスピーでデカい音が出るんですね!

このほかにも(注意:PDFが開きます→)1stTp.を見ただけでも「ごちそうさま」と言ってしまいそうな金管四重奏版や、8手ピアノ版(あの椅子にどうやって4人も座るの?あ、ピアノ2台にするんだ。4台でもいいんでしょ?だめなの?ああ、ホールに2台しかないんだ。ヤマハとベーゼン?ベーゼン出すの?高いよ。1台はリハ室のアップライトでもいいんじゃないの?だめ。なんで?ああ、その日合唱団の練習が入ってるんだ、というやりとりが必ずあるように思われる。)や、先ほどパイプオルガンのところで触れたピアノ独奏版などがあります。

これだけ編曲が多いということは、この曲がそれだけ魅力的で、何とか自分のフィールドで演奏したいと思う人が多かったからでしょう。
この曲をあまり評価しない指揮者もいるようですが、どっこい結構人気のある曲なのでありました。







歌詞と歌

以前、機会に恵まれて、某音楽大学の合唱に関する公開講座に参加したことがありました。 講師は、最近あるコンクールで優勝したという若いソプラノの講師の方と、その大学の教授のバリトンの先生。とても含蓄のあるすばらしいお話でした。 最後に質疑応答の時間が設けられたので、質問してみ...