1995年12月30日、当番はスコットランドの首都・エディンバラにおりました。いやもう、寒いのなんの。
エディンバラは北緯55度でモスクワとほぼ同じ緯度。駅前に露天のスケートリンクが開業していたので、かなりの寒さだったと思います。
岩山のてっぺんのエディンバラ城を見物して、市街地におりてくる途中、不思議なものを見ました。
よく見えませんが、後ろの横断幕には"The Edinburgh Samba"と書かれています。煤煙にすすけた古い建物に囲まれた広場で、昨日雪が降ったであろう陰鬱な空の下、この真冬の氷点下のエディンバラで、緩いリズムで覇気もなく、サンバを踊りもせずただ叩いている人々よ!
右端の張りぼてだか着ぐるみが何をするでもなくじっと突っ立っていたのがこのサンバのシュールさを引き立てていました。
この写真では切れていますが、左側に地元テレビ局のクルーがいます。でも、それ以外に見物人もなく、いったい何の目的で真冬にサンバをやっているのか全く理解できませんでした。
不思議なものを見た、と思って町へ下っていく途中、さらに不思議なものを見ました。
「アハハハ」じゃねえだろ!
丸めがねの向こうには"Jokes & Novelties"とあり、「日曜開店!」
「カード使えます!」「セール!」と貼り紙がありましたが、ブラックジョークのお国柄ゆえ、シャレのきついものがあってもイヤなので、結局入らずじまいでした。
このあと、駅からちょっと歩いたところにある、石造りのよさげなホテルに泊まった当番と友人N。
夜明け方に火災報知器のベルで目が覚めました。
寝起きでボケっとしているところにいきなりドアを叩く音。開けてみると、イギリス人の老夫婦が「非常口はどっちですか!?」当番が親切に教えてあげると、「ありがとう。ところで君たちは逃げないのかね?」
ここでようやく事態を悟った当番が、Nに「おい、逃げるぞ」と言ったとたん、老夫婦を追いかけるように走ってきたボーイさんに「早く逃げてください!」と言われ、飛ぶようにして外に逃げたのでした。
もう消防車が到着して消火活動をしていました。どうやら地下のバーから出火した様子で、石の階段の上を何本もホースが這っています。夜明け前。寒いったらありゃしない。
逃げてきた人々がホテルを心配そうに眺めています。毛布をかぶった人、カーラーを巻いたままのご婦人。ところが、中に変なやつがいました。
この絵の人から、上着を取った格好でいる青年。
真っ赤なハイソックスに靴も履かず、赤いタータンチェックのキルトにYシャツで、困ったようにウロウロしているのです。
キルトはスコットランドの伝統衣装だから、着ていて別に不思議はないけれど、どうして明け方の4時になるかならないかの時間にもうキミは準備しているのか。そりゃ今日は大晦日だから、スコットランド中からキルトを着た人々がこのエディンバラに集まってくるらしいけれど、ちょっと浮かれすぎではあるまいか。
結局その後、宿には連泊できずロンドンに戻ることになったのですが、いやあ、エディンバラというのはなかなかおもしろいところでした。
ところで現在のエディンバラのサンバシーンはどうなっているのか。彼らの末裔が季節もわきまえずわびしくサンバのリズムを叩いているのかと思いきや、なんとエディンバラ・サンバスクールという学校ができて、パレードなども行われている様子。まことに慶賀の至り。「音楽に国境なし」とはまさにこのことですね。
歌詞と歌
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