"Block M"というのはアメリカの作曲家ビリックのマーチ(1955年)です。
マーチに季節もへったくれもないというのはごもっともですが、当番の出身高校では、吹奏楽部の定期演奏会は決まってこの曲がアンコールでした。就職して練習時間がないときは、楽器とミュートを持ってアンコールだけ吹きにいきました。アンケートに「アンコールを吹いていた卒業生がとても楽しそうだった」と書かれて、実に恥ずかしい思いもいたしました。定期演奏会はだいたい3月の最終週くらいに開催されていたので、この時期は「"Block M"の季節」なのです。
高校時代"Block M"が何を意味しているのか全く知りませんでした。恥を忍んで申しますと、こんなものを想像していたのです。
紛う方なき"Block M"。でも、こんな物を素材にしてマーチを作るとは、どんな想像力をしているのか。「スプーン1本でも曲にしてみせる」と言ったのはリヒャルト・シュトラウスだったと思うが、こんなモノをマーチにしてしまうとは……。当時の当番は悩んだのでした。
そのうち、風の噂で(まだWEBのなかった頃ですから)「ミシガン大学がフットボールの試合時に作るM字の人文字」だという情報を小耳に挟みました。そして、こんな感じで想像したのです。
これは、PL学園名物のあれではないか!アメリカにも似たような学校があるんだな、と高校生の当番は思い、だいたい20世紀はそれで暮れていきました。まあ、この人文字を作って、スタンドで吹奏楽団が吹いているんだろう程度の情報と想像だったのです。もっとも、この曲について詳しく書いてある本(例:秋山紀夫『行進曲インデックス218』等)の存在も知らなかったし、タイトルの意味を知らなくても吹くのに困らなかったのですが、何か心にわだかまりがありました。
そして高度情報化社会の到来とともに、真実を知ることとなったのです、「ミシガン大学のマーチングバンドがフットボールの試合時に作るM字の人文字」が真実だったと……。
では、ご覧いただきましょう。どうぞ!
あっと驚く"Block M"。そしてMが歩いて行くよ!。本来ならミシガンまで伺うべきところ、こうして居ながらにして拝見できるとは。いい世の中になったものです。ん?でも、バックで流れているのは"Block M"ではないですね。どうやら"Fighting song"という応援歌のようです。いろいろ探しましたが、ミシガン大学マーチングバンドの演奏はありませんでした。そりゃそうだ。譜面にConcert Marchって書いてあったじゃん。そうか、あれは「座って吹け」という意味だったんですね。「この曲をホールで座って聴きながら、あのBlock Mのフォーメーションを思い出してください」ということなんだ。だから、すこし速めに演奏すると、あのステップが想像できるというわけなんですね。昭和の終わりの高校生にはムリな話ですわ。
で、ミシガン大学が座って吹いたのがこれです(ただし、卒業生の楽団)。もうちょっと音質が良いといいんですが。指揮者は最初、なんて言ってるんですかね。「帰ったら白ワインなのさ」とか、「映画に遅れるから速く振るよ」とかのいわゆるアメリカン・ジョークなのでしょうか。
日本の演奏はみんなうまいですね。これで十分じゃないでしょうか。
本場アメリカの演奏を見てみましょう。
まずはアナポリス合同バンドの演奏。これもある意味あっと驚く"Block M".。何が驚くって、この曲の標準タイムはだいたい3分15秒前後ですよ。ところがこれは2分28秒じゃないですか。「うわあ、超っ速(ちょっぱや)だ!」と思って開けてみるとこれだ!
風景も音楽も牧歌的。そうか、第1マーチの繰り返しとトリオの1回目をばっさりカットしているんだ。コーダへのつなぎに入る前の一瞬の沈黙が斬新です。何でこんなに短くする必要があるのか。こんなのどかなコンサートで時間の制約があるとは思えないし、短くしたいならもっと速く振ればいいのに。そうか、速く振ると木管が追いつかないからか。だったらもっと別な曲にした方がよかったんじゃないか、など、疑問のつきない演奏でした。余計なお世話か。すみません。
ちょっと刺激が強かったので、普通の演奏を。おおらかな演奏です。"Best of the Band"と説明があるので、何かのコンクールで優勝したのでしょうか。一方こちらはすてきな演奏ですね。いかにも音楽好きが集まってやってます、といった感じのバンド。普段はジャズとかやってるんでしょうね。最後のhigh Bbがキまりました。ここをキめるのがラッパ吹きの見栄というものです。
アメリカの演奏は、日本に比べるとゆっくりですが、音大生の演奏は速い。これは、音楽性の違いなのか、技術的な問題なのか。ところで気が付いたのですが、コーダに入る直前の三つの和音をリタルダンドしている演奏はありませんでした。もともと譜面にそんな指示はないので、あの演奏法は日本人が開発したもののようです。調べればアメリカの演奏でもそういうのがあるのかもしれませんが、今のところ未見です。皆さんのバンドはいかがですか?
アンコールになるとやはりテンポは上がるもの。本当の超っ速演奏は、こっちです。市立柏高校の演奏が148ぐらいだったのに対し、今計ったらなんと170!指揮者が気持ちよさそう。そりゃこんなにドライブしてたら気持ちいいでしょうよ。コーダは200を超えています。
これもすごい。トランペットのあのフレーズをワウワウミュートで吹くのは結構大変ですが、よく響いてます。コーダが見もの。ここまでやっていいのか。指揮者のアイディア満載です。計ったところ、Naniwoを上回る205を記録!こりゃ盛り上がるわ。高校生、よく頑張った!
ところで、上のNaniwoと桐蔭学園に、ある共通点があるのにお気づきでしょうか?そう、上手側に巨大なコントラバス・クラリネットがあるという点です。だから何、というわけではありませんが……。
ところでトランペッターの皆さん、トリオの後のミュートの処理はどうなさっておいでですか?大所帯のバンドならソリストとその他に分かれて吹けるでしょうが、当番のように人員のあまり余裕のないバンドでばかり吹いていると、ティンパニが「どこどんど」って叩いている間に外さなくてはならないので、いろいろ考えました。目の前に段ボールの箱を置き、中にクッションを敷いてその中に投げ込むとか、トリオの半分を過ぎたら左手でミュートを握って一瞬で外すとか。どれも無理があり、今のところ「素早く外して膝の関節に挟む」というのが妥協案ですが、演出がある場合、これも指揮者がどこで立たせるかによって変わってくるので、流動的です。コメント受け付けていないのに質問してすみません。
ああ、「少々」とか言っておきながら長々書いてしまいました。昨日(もうおとといになっちゃったのか)演奏会が終わったばかりだから早く寝なければ。
もう"Block M"を吹かれた方、お疲れ様でした。これから吹かれる方、Fighting!
追記・その後の調べで、桐蔭学園とNaniwoは、同じ方が振られていることが分かりました。変わらぬスタンスで曲に臨まれる姿勢に敬意を表します。
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