2013年3月18日月曜日
フェルデの「結婚行進曲」
ノルウェーのジャズトランペッターにして作曲家のヤン・マグネ・フェルデ(Jan Magne Førde 1962~)の「結婚行進曲」(Bruremarsj)は、日本ではほとんど知られていない曲です。
当番がこの曲に出会ったのは、いまから7~8年前ですかね。「ケルトの叫び」を聴こうと思ってノルウェー海軍バンドの"Crossover"というCDを買ったところ、その冒頭に入っていたのがこの曲でした。
「行進曲」のはずなのに、途中サックスのソロ(ソプラノからテナーまで?)が入っていたりスウィングしていたりと、ジャズの要素が結構強くて、とてもおもしろい曲だと思ったものでした。
当番が初めて聴いたのは上述の通り吹奏楽でしたが、おそらく作曲者のバンド、"Brazz Brothers"による演奏が「原曲」なんでしょうね。なかなかシブいクインテットです。トランペットを振り回すように吹いているのが、作曲者のフェルデ氏です。もとがこうだから、ジャズっぽくなるんでしょうね、というよりジャズです。後ろの軍楽隊の人もノッてます。
で、調べてみるとこれが北欧で大人気。作曲は1992年ですが、スコアの表紙の裏には「音楽家のあいだで人気のこの曲は、ノルウェーでは年間数百の結婚式で演奏されている」と書かれています。「数百」?本当か?
ああ、本当に使われていますね。すばらしい!いかにも結婚式ですね。メロディーをヴァイオリンで弾いてるのは、北欧音楽の特徴でしょう。民謡で使われるときには「ヴァイオリン」ではなく「フィドル」といいます。北欧のものは、きれいな装飾を施しているものもあります。
このビデオもいいですねえ。BGMに使われています(45秒過ぎから)。これもまた結婚式ですね。ノルウェーのリフョルデンという所だそうです。すてきすぎる!ノルウェーではこういう結婚式があるんだ。もう、出席者全員が新郎新婦を祝福しています。いとめでたければ涙流しはべりぬ。Siriさん、Gusさん、末永くお幸せに。
教会関係ではパイプオルガンと2本のトランペットの演奏があります。いやあ、このトランペット吹いてみたい!9歳のアゴット君と13歳のトロンド君の演奏です。「天使のラッパ」ってやつですね。
マーチングもまたおもしろい。アメリカンなヤツではなく、ブリティッシュでスクウェアなフロアドリルです。後半が面白い。ドラムメジャーが踊ってます。お客さんも楽しそう。「サンダーバード」のDVDのエンドロールでロイヤル・マリーンズ・バンドがしびれるようなドリルを披露していたのを思い出しました。
吹奏楽の演奏はParnu Muusikakooli puhkpilliorkesterのもの。今回演奏する譜面と同じだと思います(Perc.はアレンジしてありますね)。大人から子供までいる市民バンドのようです。子供は学校の吹奏楽部、大人は社会人バンドという住み分けがはっきりしている日本とはずいぶん雰囲気が違います。パルヌというのは、エストニアの南にある町だというんですが……。どこ?
ブラスバンドについては「『大学祝典序曲』編曲あれこれ」をご覧いただくことにして、Knarvik Skulekorpsによるブラスバンド演奏を。このバンドも前回の救世軍バンドと同じく、コの字型の配置です。一般にブラスバンドというのはこういう配置が多いようです。吹奏楽やオーケストラに比べて省スペースでいいですね。2曲目のテナーホルンのソロがいい音色。"Lark in the Clear Air"という曲だそうです。当番はテナーホルンの音色が大好きなのですが、買っても吹くところがないからねぇ。アメリカのフロリダでも演ってます。"Banda del Cuerpo Central con refuerzos de la Banda Divisional y de Playa Ancha."というバンド(合同バンド?)のようですが、スペインのバンドなのか、南米のバンドなのか、アメリカンヒスパニックのバンドなのか分かりません。Tp.ソロがんばってます。
ノルウェーは吹奏楽がとても盛んな国で、Wikipediaでノルウェーのバンド一覧を索くと、かなりの数のバンドがあることが分かります(ただしノルウェー語)。ノルウェー吹連のHPも充実(ただしノルウェー語)。
さて、この曲は合唱でも人気があります。
まずはノルウェー・スコラ・カントゥルムの演奏を。韓国でのツアーのようですが、後半、合唱団がフィンガースナップを始めたところで聴衆が戸惑い、そのうちに会場が一体となって溶け合っていく様子がよく分かります。歌詞はありません(「スキャット」といいます)。
次にストックホルム王立音楽大学室内合唱団。伴奏がアコーディオンというのもまた民族音楽っぽくていいですが、みなさん実に楽しそうに歌ってます。フィンガースナップと足ドン(正式名称なんて言うんですか?)は、おそらく楽譜の指示ですね。全員黒を着ていますが、よく見ると全員ちがうキメかたをしています。センスがいい。
ピアノ独奏もあります。調律めちゃくちゃですが、背景に見える椅子と絵が趣味を感じさせます。時折見える金髪からすると、女性が弾いているようですね。
ノルウェーという国は民族音楽が豊かなお国柄で、「エスタダーレンの結婚行進曲」「ヴァルソイフィヨルドの結婚行進曲」「セリョルドの結婚行進曲」など、ほかにもたくさんあって紹介しきれないほどです。地域ごとに「結婚行進曲」があるんですね。グリーグが自国の民謡に熱中したのも分かります。
ノルウェーの吹奏楽曲といえば名曲「ヴァルドレス」くらいしか我々は知りません。これだけ吹奏楽が盛んな国なのだから、すてきな曲がまだまだたくさんあるはずです。ただ、譜面を手に入れるのが容易でない。どこかの出版社が取り扱ってくださいませんかねぇ。
【おまけ】
なんとフェルデはもう一曲「結婚行進曲」を作っていたのです。それが、「ベイアーンの結婚行進曲」。フェルデらしく、トランペットソロの曲です。これは今回初めて知りました。こんなに気持ちよく吹いてみたい。
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